映写機の保守と修理

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映写機が動かない、機械には弱い、修理に出すとなるとかなり費用もかかるようだし・・・そんなあなたのために ”少し準備するだけで、あなたにもできる映写機の保守と修理” を目指してこのマニュアルをつくりました。少しだけの心構えと少しだけの道具を持って、映写機の保守と修理に取り組んでみませんか。かなりの不具合を自分で直すことができると思います。
これまでにも本サイト記事を参考にして映写機を修理し「おじいさんのフィルムを上映することができた」というようなお知らせをいただいております。ご活用いただければ嬉しいです。

このマニュアルは、佐竹章一氏(銀塩カメラ・映写機コンサルタント)からご指導をいただき制作しました。ご支援を賜りました佐竹氏に深く感謝申しあげます。
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CONTENTS

Ⅰ.はじめに

Ⅱ.8ミリ映写機の構造

1.映画の仕組み
^^(1)静止画が何故動くか
^^(2).画面のチラツキ(フリッカー)
2.映写機の構造
^^(1)ホリペットの場合
^^(2)映写機の構造図解
^^^^a. 前面
^^^^b. 背面
^^(3)主要部の説明
^^^^a. フィルムゲート
^^^^b. クローとスプロケット、たわみ
^^^c3枚羽根シャッター
^^^^d. モーター
^^^^e. ファン
^^^^f. フライホイール
^^^^g. ベルト
^^^^h. リール軸

Ⅲ.分解組立の基本

1.分解にあたって
2.道具
^^(1)ドライバー
^^(2)ボックスドライバー
^^(3)ラジオペンチ
^^(4)クリーニング用品

Ⅳ.不具合への対処方法

1.映写ランプが点灯しない・・・映写ランプの交換
^^(1)ランプがソケットに正しく装填されているか?
^^(2)ランプが切れていないか?
^^(3)ランプの購入方法
2.リールが回転しない・・・ベルトの架け替え
^^(1)ベルトが切れていないか?
^^(2)新しいベルトの製作方法
^^^^a. ウレタンベルトの購入
^^^^b. 熔着の方法
^^^^c. 取り付け方
3.リールの回転力が弱い・・・巻き取りトルクの調整
4.ベルトが廻らない・・・ベルトのサイズ確認とクリーニング
^^(1)ベルトの径が大きすぎないか?
^^(2)ベルトに油がついていないか?
5.映写速度がおかしい・・・速度調整
^^(1)映写速度の測定方法
^^(2)映写スピードの調節方法
^^(3)簡易テレシネへの応用
6.音声がでない・・・接続の確認、スイッチの清掃
^^(1)スピーカーと接続できているか?
^^(2)音声磁気ヘッドが汚れていないか?
^^(3)スイッチに問題がないか?
^^(4)光学音声の再生
7.異音がする・・・・駆動部分の確認
^^(1)フィルム経路で異音が発生している場合
^^(2)映写機本体内で異音が発生している場合

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Ⅰ.はじめに

映写機の保守と修理のためには少しばかりの心構えが必要です。やる気に加えて安全に作業をすすめるために「注意」が必要です。

〔注意〕
映写機本体の裏カバーを開けて保守・修理作業をするときは、十分に注意をし自己責任ですすめてくさい。とくに以下の点について注意してください。

1.高速回転する円盤状の3枚羽根のシャッターは、ナイフのように危険です。
大きな怪我になる危険がありますので、回転中は絶対に触れないよう注意してください。

2.モーター・駆動ベルト・歯車など回転部分は、手指の挟み込み事故に注意してください。

3.映写機内部は、100Vの電流が流れている部分があり、感電する危険があります。
感電防止のため、電源コードを抜いて作業をしてください。電源を入れた状態で
作業する必要がある場合は、ゴム手袋を着用してください。100xBACKt .jpg

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Ⅱ.8ミリ映写機の構造

1.映画の仕組み

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(1)静止画がなぜ動くか?

映画は眼の残像を利用しています。太陽や明るいランプを見て眼を閉じると、瞼に光が残ってみえます。これが残像です。視神経にわずかの間、光信号が残っているのです。明るい縦線と直角に寝かせた横線とを交互に1秒間ずつ表示すると、人間の眼はその通りに縦線と横線を識別できますが、時間を1秒から段々に短くしていくと、数分の1秒からは縦線が横に倒れるように見えてきます。これが眼の残像作用を使った動画の仕組みです。複数の静止画で作られている動画がギクシャクせずに自然に見えるようにするために、映画館の映写機は毎秒24コマのスピードでフィルム送りをしています。8ミリ映写機の場合は、レギュラー(ダブル)は毎秒16コマ、スーパーとシングルは毎秒18コマを標準としてフィルム送りをしています。

(2)画面のチラツキ(フリッカー)

このフィルム送りにより画面の動きは滑らかになりますが、なぜかチラツキ(フリッカー)がみえてしまいます。その原因はひとつの画面から次のコマの画面へ移動するときのコマ移動間の暗黒画面を見ているからです。人間の眼には明暗の差をよく見分ける能力があるので、秒速16~24コマ程度のスピードではコマ移動時間の暗黒(フィルムが移動しているときはシャッターによってランプが閉じられている)を認識してチラチラする画面にみえてしまいます。スピードを1秒間に50回前後にするとみえなくなります。このため映写機は、1コマの画面を複数回映写する機構をつけて1秒間に50回前後の速度の映写(明暗)にさせる方法で、人間の眼をだましフリッカーがみえなくなるようにしています。
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2.映写機の構造

(1)ホリペットの場合

映写機の構造を理解するために最低限の機能を持った映写機を紹介します。昭和45年頃に発売された「世界ではじめて、乾電池で動く8ミリ映写機、ホリペット」です。わたしにとっては初めて買うことができた思い出の映写機です。とっくに壊れて棄ててしまいましたが40年ぶりにヤフオクで落札しまた。学研の映写機は手まわしのオモチャに近いもの(失礼)ですが、この「ホリペット」は本物の映写機に近いものです。
学研8mm映写機(Amazon)

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ランプは点灯してもモーターが廻らないものでしたが、知り合いの専門家のかたにお願いして動かすことができました。電源は単1乾電池6本(2本がモーター用、4本が豆電球用)でモーターを回転させウォームギヤで回転速度を落とし、クロー機構でフィルムを搔き落しながらフィルムをすすめ、ベルトを介してリールを回転させて、フィルムを巻き取っています。フィルムはプレッシャープレートで固定、3枚羽根シャッター(後記)はありません。ピントはレンズ筒を前後にスライドさせて調節します。豆電球なので、小さな画面に暗くしか映写できませんが、8ミリ映画の雰囲気を楽しむことができます。なんと映写スピードの調節機構までなります・・・ニクロム線を抵抗にして、ニクロム線を伝う長さを物理的に変えることでモーターの回転速度を変化させています。

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映写機の機構のポイントとなる、クロー(フィルムを掻き落して進める爪機構)をこの機種で説明します。回転軸の中心からズレた位置にクローのバーがついており、回転に伴って、バーは左より→下より→右より→上よりに動きます。このバーの動きを、上下固定軸(写真の右のマイナスネジ部分)で上下を固定させることで、クローがフィルムの穴をとらえて、下に掻き落とします。クローの複雑な動きをこの単純な仕組みで実現させた発明はすごいことです。

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→ホリペットの映写の様子 Brumberger1503Projector(YouTube)

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(2)映写機の構造図解

8ミリ映写機は、
1.光学系~レンズ・ランプ・防熱フィルターなど
2.フィルム駆動系~フィルムゲート・スプロケット・クロー・サプライリール・テイクアップリール・モーター・フライホイール・モーター制御回路など
3.音声録音再生系~磁気ヘッド・光学再生ヘッド・マイク入力・ライン入力・アンプ・スピーカーなど
4.電源供給系~トランス・リード線・ワイヤーハーネス(電線の束)など
で構成されています。

映写の仕組み(ランプ・シャッター・フィルム・スクリーンの関係)
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下向きの正像が上下反転して投影されます。

a. 前面

■サウンド(フジ)機

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(c)佐竹章一

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フジカスコープSH9(2トラック)

■サウンド(エルモ)機

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(c)佐竹章一

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エルモGS-1200(2トラック)

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エルモST-180(2トラック)

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エルモST-800(1トラック)

■サイレント機

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(c)佐竹章一

clip_image020.jpgエルモK-100SM(サイレント)

b. 背面

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フジカスコープSH9

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エルモGS-1200

この機種は、モーターが4つもある高級機です。一般的な機種は、1つのモーターで、フィルム給装(ベルトを介して巻き取り、巻き戻しもする)と冷却ファンを兼ねていますが、これはフィルム給装・巻取り・巻き戻し・冷却ファンそれぞれ独立したモーターになっています。

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エルモST-180

フライホイールの円周部の穴は、工場での取り付け時に回転むらを調整するためにあけたものです。

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エルモST-800

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エルモK-100SM

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エルモSC-18
(c)succhaさん(本サイトをご覧になって写真を送ってくださいました。)
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(3)主要部の説明

a. フィルムゲート

フィルム送りのかなめとなっているのがフィルムゲートです。フィルムゲートはアパーチュアプレート、プレッシャープレートとサイドガイドとで構成されています。アパーチュアプレートのなかにある映写窓のことをアパーチュア(開口)といいます。フィルムゲートがフィルムの画像以外の前後と左右両端を軽くはさんでいます。またクローでフィルムを上から下に送るときに、フィルムの横揺れがでないようにフィルムの右側端をバネを使って左側に押し付けています。このバネが弱いと映写画面に横揺れがでます。なおフィルムは、フィルム送り用の穴(パーフォレーション)を送り爪(クロー)で正確に間欠送りしています。フィルムのおさえは両端部分だけのため、フィルム端部に変形(俗に言うワカメ状)があると、映写画像面がレンズ光軸に対して前後に動き、ピントがずれる問題があります。このため、標準的な映写機のレンズのFナンバーは焦点深度を深くするためにF1.3前後を採用しています。映写機が古くなって、フィルムゲートにほこりやごみが付着し、ゲート機構部品の動きが悪くなると、フィルムのおさまり(レジストレーション)が悪くなりピンボケが発生する原因となります。装填したフィルムがワカメ状であればなおのこと映写中に頻繁にピンボケが発生することになりかねません。

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SH9(シャッター・クロー・フィルムゲート)

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ST-180(クロー・アパーチュア)

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K-100SM(ゲートを開いた状態)

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GS-1200

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ST-800(フィルムゲートを開いた状態)

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フィルムのパーフォレーションにクローが噛んでいる

b. クローとスプロケット、たわみ

フィルムの送り込み(サプライ)と巻き上げ(テイクアップ)は、スプロケットの歯とフィルムのパーフォレーションが噛み合うことで実現しています。送り爪(クロー)でフィルムの穴(パーフォレーション)を掻き下ろすことでフィルム送りをしています。アパーチュア部分では正確な間欠送りが必要であるのに対して、音声ヘッド部分は正確な連続送りが必要です。この矛盾を、クローと連動するフィルム送りギヤ(スプロケット)を両端に置くこと、いわゆるクローズド・ループ構造にすることと、フィルムにたわみ(緩衝機能)を持たせることで解決しています。

なおサイレント映写機の場合は、殆どの機種がスプロケットを省略しています。サウンド機は映写速度が狂うと再生音声の歪みが目立つために、スプロケットを使ってフィルム送りを高精度で管理する必要がありますが、サイレント機は実用上問題ない範囲で少し精度をさげ、間欠送りと連続送りの調整は前後のリール軸までのフィルムの給送距離を長くとることで行っています。

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SH9(上部)

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SH9(下部)

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GS-1200(上部)

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GS-1200(下部)

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ST-800(上部)

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ST-800(下部)

c. 3枚羽根シャッター

フリッカー問題を解消しているのが、ランプとフィルムゲートの間にある回転式セクター(俗称シャッター)です。このシャッターで同じ1コマの画像を複数回映写することにより、1秒間に50回くらいの画面転換を行います。映画館の映写機は、2枚羽根のシャッターにより24コマを48コマにみせかけて映写、8ミリ映写機は3枚羽根によりレギュラーは16コマを48コマに、スーパーとシングルは18コマを54コマにみせかけて映写しています。

SH9

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ST-800

d. モーター

映写機の駆動源は昭和40年代まではACモーターが主流でしたが、昭和40年代後半には性能の良い小型のDCモーターが製造され、映写機にも採用されるようになりました。18コマ・24コマ/秒で正逆回転を簡単に行うためにはDCモーターのほうが有利です。

e. ファン

モーター軸には、モーター・映写ランプ・磁気ヘッドの冷却のためにファンをつけています。

f. フライホイール

サウンド映写機にはフィルムに光学録音された音声の再生機能や、磁性体を塗布したサウンドフィルムの音声をテープレコーダーのような音質で録音再生する機能が組み込まれています。テープレコーダーもそうですが、モーターの回転をそのままフィルムに伝えると音が「ワウワウ・・・」と聞こえるワウフラッターが発生してしまいます。これを除去するために、回転を滑らかにさせるための部品、はずみ車(フライホイール)が必要になります。

g. ベルト

DCモーターはACモーターと違って、ある数の磁極を円周状に配置して交播磁界を発生させて回転させますので厳密に言うと「カク、カク、カク」と回っています(コッキングと言います)。DCモーターのコッキングを吸収するために、モーター軸から機構部へ駆動を伝える部分にゴムベルトを使います。歯が付いたタイミングベルトでは、回転数は誤差がないのですが伸びないためコッキングを吸収できません。

h. リール軸

リールの回転は、フィルムが巻かれている直径の大小によって変化するので、同じ1回転であってもフィルムの長さが違います。映写フィルムは、クローとスプロケットにより一定のスピードですすみますが、フィルムをたわませることなく送り出しと巻上げをするためには、リールの回転速度を変化させる(太巻きのときはゆっくり、細巻きのときは早くさせる)必要があります。このため、巻き取りリール軸に摩擦クラッチ式の滑り機構を設け、リールの回転力(トルク)を調整しています。同様の機構で送り出しリール軸にも、慣性でリールの回転が映写スピード以上に速くなってフィルムがたわむことのないように、フィルムに軽いックテンション(逆回し負荷)をかけています。

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SH9の巻き取りリール軸の部品

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Ⅲ.分解・組立の基本

1.分解に当たって

身の回りと頭の中の整理整頓に心がけてください。外したねじや部品は、順序よく並べるか、ユニットごとに固めて置ききます。メモを取りながら進めるか、デジカメで撮りながら分解をすすめて行くのがよいでしょう。外したファスナー類(ねじ・ナット・止め輪の総称)は、元の部位に装着しておくというのも紛失防止対策です。

2.道具

(1)ドライバー

ねじ(小ねじ・ビス・ボルト・ナット)類の大きさ(ねじ径と山形)は、「右まきメートル並目ねじ」がほとんどです。右まきとは、右に回すと進んでいくねじのことです。普通は右ですので、メートルのMを頭につけてミリメートル単位で、M3とかM4とかいいます。車などはM6が多いですね。3ミリの左ねじは「左M3」と表記します。M6あたりからそれ以下のねじ径のものを「小ねじ(ビス)」と呼んでいます。時計やカメラに使われている精密小ねじも、小さいだけで基本は同じです。ねじの頭には、回すための溝(ビットと呼ぶ)があります。昔のねじはマイナスねじ(マイナス(-)溝)でしたが、いまはプラスねじ(プラス(+)字穴)が一般的です。六角の穴のねじや最近では星型のものもあります。十字のビットは、小さい方から、0(ゼロ)番・・・M3以下の精密小ねじ、1番…M2.5以下の並目小ねじ、2番…M3~M8と3種類ありますので、ビットに「カチッ」とはまるものを選択してください。

(2)ボックスドライバー

六角ナットを回すには、通常はラジオペンチで代用していますが「かじる」場合があるので、ボックスドライバーがあると便利です。映写機に使われている六角ナットはM2・M3・M4・M5くらいです。
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(3)ラジオペンチ(俗称ラジペン)

ラジオペンチはアンプ制作や電気配線で使う道具で、少し小さめのものが映写機修理には便利です。なお、「E形止め輪」(Eリング)は、軸や溝を傷つけないようにしながらマイナスドライバーでこじ開けてはずしますが、外したEリングを再度挿入するのは、ラジペンの出番です。本格的には、こちらの説明をご覧ください。
Eリングの外し方、取り付け方(教えて!goo)


(4)クリーニング用品

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a. レンズクリーニング液

ヨドバシカメラ等で売っています。

市販品よりも効果がある液を自作できます。薬局で購入できるエチルエーテルとエタノール(エチル
アルコール)を使って次の処方で作ります。エチルエーテル5に対してエタノール(エチルアルコール)5です。エチルエーテルの割合をこれより多め(6~7)にすると揮発が早くなり初心者には使いにくいと思います。この混合液は発火性ですので、取扱いには十分注意してください。

b. ウエス(ケバ立たないふき取り布)、ペーパー、綿棒

綿棒は磁気ヘッドのクリーニングなどには問題ありませんが、レンズ表面のクリーニングには不向きです。ティッシュペーパーもケバ立つので不向きです。

c. ほこり飛ばしスプレー

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Ⅳ.不具合への対処方法

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1.映写ランプが点灯しない

(1)ランプがランプソケットに正しく装着されているか?

ランプがランプソケットにカッチリと装填されているか確認します。ランプの電極部や反射ミラーなどに使われているセラミック接着剤は、経年劣化でもろくなっていますので、強い力を加えて壊さないように注意してください。反射鏡がランプ固定金具(ブラケット)に正確に装填されているか確認します。所定の位置に収まっていないとランプと映写レンズの光軸がずれてしまい、映写画面に照度ムラが発生します。

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GS-1200(スライド式)

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ST-180(スライド式)

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ST-800

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K-100SM

(2)映写ランプが切れていないか?

a. ランプの寿命

映写ランプの寿命は、新品・定格電圧・連続点灯の条件で50時間が一般的です(ELB30V80Wは25時間)。ランプ点灯電圧は定格電圧の-5%-、例えばEFPの場合、点灯時に11.4~11.5Vぐらい印加されて(電流が流れて)いますので、公称寿命の22倍程度の時間は使用できます。寿命が近づくと、フィラメントが細く荒れてきますので、点灯した瞬間や振動を与えた時に切れてしまいます。

b. ランプの種類

KP-GT(8V50W)
フジカ  M15 M20 M25 M27 M30 M35 TM40

EFM(8V50W)
フジカ M25DX SH5 SH5D

EFP(12V100W)
フジカ M45 MX50 SD12 SD15 SH6 SH7M SH8 SH9エルモ K100SM
ST180 ST600 ST600D ST800 GS800

EFR(15V150W)
フジカ SD20 SD25
エルモ ST1200 ST1200D ST1200HD

DNF(21V150W)
フジカ SH1 SH10 SH30 MG90 MX70

EJM(21V150W)
エルモ GPシリーズ SC30 SPA SPED SPHD

c. ランプの購入

映写機用ランプの購入は、首都圏のかたには秋葉原の光東電気さんをおすすめします。
多分、日本一安いと思います。遠隔地のかたも発送してくださるのでお気軽に電話してみてください。親切なご主人が対応してくださいます。
光東電気㈱

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2.リールが回転しない

(1)ベルトが切れていないか?

映写機の裏蓋を開けて、ベルトが切れていないか確認します。ベルトは一般的に、前後のリールを駆動するためのものとシャッターを回転させるためののものと、2つあります。長いこと使われていなかった古い映写機は、ベルトがドロドロに溶けていたり、ボロボロに乾燥して切れていたりします。溶けている場合はゴム手袋をして取り除いてください。ベルトがプーリーなどに溶着して水拭きでは除去できないときは、マニュキア落とし除光液(エナメルリムーバー)で拭きとることができます。

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フジカスコープSH9

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GS-1200(ベルトはこの部分だけで、ほかはそれぞれにモーター駆動です。)

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エルモST-180

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エルモST-800

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エルモK-100SM

(2)新しいベルトの製作方法

ベルトが切れているときは、自分で新しいベルトをつくります。

a. ウレタンベルトの購入

ウレタンベルトを購入します。映写機にもよりますが、メインベルト(モーター動力伝達)・リール巻き取りベルトともに、3ミリ径のベルトが丁度よいようです。購入先は工具類ネット販売のツールネットをおすすめします。2ミリ径が1mで81円、3ミリ径が103円、4ミリ径が154円、ほかにメール便送料、と極めて安価です。注文画面は宅急便のみになっていますが、連絡欄に「メール便希望」として送料を確認してください。
ツールネット(坂井弁吉商店)
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b. 溶着の方法

ベルトを引っ張らないで装着した状態の長さ×0.95~0.97(映写機設計上の適正テンション)で切り、切断面に熱を加えて溶着します。道具としてはハンダごてが一般的なようですが。わたしはお好み焼きのヘラをガスの炎で焼いて使っています。このほうが焼けている面積が広いこと、次の溶着する作業と同じ動きになることから、やりやすいと思います。このほかにもいろいろな方法が考えられますので、工夫してみてください。この作業では不注意による火傷や火災などに十分注意してください。溶着するときは両方の先端を正確に一度で合体させ、1分以上その状態を保持します。それから2日程度そのままにして接着面を強固にさせたら、ツメキリなどでバリをカットして完成です。

c. 取りつけ方

メインベルト
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メインベルトは、まずモーター軸側に隙間を通してひっかけ、ひもでひっぱりながらもうひとつの軸にひっかけます。狭いところでベルトの張りもあるため、作業がやりにくかったのですが、ひもで引っ張る方法に気がついてからは、極めて簡単にできるようになりました。このノウハウは各機共通です。

リール駆動ベルト

SH-9

リール駆動ベルトは、ギヤ類の裏側に装着されており、ちょっとだけ手間がいります。
・前部ギヤは可動式ですので可動部分を動かしてギヤの裏側にベルトを回しこみます。
・前部リール回転軸のところが非常に狭いのですが、純正ベルト・代替3ミリ径ベルトともに、隙間を通すことができます。
・モーターを支えているプラスねじをはずして、ベルトを通します。
・後部リール軸は、筐体の反対側のリール軸を固定しながら、6角ボルトまたはその次のギザギザの
丸い部品を左回しで外し、ベルトをかけ、締め戻します。

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ST-180    引っ掛けるだけです。

ST-800

前部の軸はプラスねじで緩めて、隙間をつくり、ベルトを外します。後部の軸は、邪魔をしている隣りの軸をマイナスドライバーで緩めて取り外しベルトをかけ、締め戻します。

なお、純正ベルトは、V型など回転軸の形状にマッチしたものが主体ですが、ウレタンベルトは断面が丸のために回転軸との接点が少なく、径が溝にマッチしていなかったりすると滑って空回りする場合があります。その場合は、項目4.「ベルトが廻らない」をご参照ください。
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3.リールの回転力が弱い

ベルトは動くが、後部巻き取りリールの回転が弱く、フィルムをうまく巻き取ってくれないのは、リール軸に摩擦力で回転を伝えているクラッチ機構の摩擦部材(コルク・フェルトなど)の劣化で伝達力が低下しているためです。バネによる締め付け力を増やして、トルク(回転力)を強くします。

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ST-180
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(A)を緩めてから(B)の小判型プレッシャープレートを締め付け、(A)を再度締め付けます。
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ST-800  (B)を6角レンチで緩めてから(A)を締め付けます。
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(A)が使用中に緩むときは、接着剤をつけてください。

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4.ベルトが廻らない

(1)ベルトの径が大きすぎないか?

リール軸は回転しているのに、何故かベルトが廻らないで空回りしていることがあります。ベルトの径が大きすぎると空回りします。この場合は小さい径にベルトを作り直します。応急処置として、軸に輪ゴムなどを巻きつけて軸の径を太くすることで対応できる場合があります。

(2)ベルトに油がついていないか?

ベルトや受け軸に油などが付着していると、滑って空回りします。洗剤などで油分をおとしてください。歯ブラシを使うと便利です。
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5.映写速度がおかしい

(1)映写スピードの測定方法

映写スピードの測定は、ストップウォッチかストップウォッチ機能付き腕時計(なければ秒針付きの時計でも可)と電卓があれば可能です。映写機はウォームアップ運転を数分間実施してください。なお冬場の寒い時期は暖かい部屋に1時間以上出しておいてください。

フィルムを測定用具として使います。
8ミリの場合、映写スピード18コマ設定では1秒間にフィルムが3インチ(7.62cm)、24コマでは4インチ(10.16cm)進みます。映写スピードの調整には、1メートル以上あるシーンの間隔を使って、画面が切り替わる瞬間から、その次のシーン切り替わりまでの時間を測定して行います。フィルムがあまり短いと測定も忙しいでしょうから、だいたい映写時間が10秒前後の長さをおすすめします。これより長くても問題はありません。余裕をもって測定できると思います。

例えば、シーンがはじめから終りまでで98cmあったとしましょう・・・このフィルムの適正映写時間は、18コマのときは12.86秒(98cm÷7.62cm)、24コマのときは9.64秒(98cm÷10.16cm)です。18コマと24コマそれぞれが、正転映写で所定の時間(誤差は5%が目標)になるよう調整してください。

(2)映写スピードの調整方法

サウンド映写機は工場出荷時には、設定速度(18コマ・24コマ)に対して誤差±1コマ以下に調整されていますが、いまや経年劣化によりモーターや機構部の潤滑が悪くなったりして、映写速度が少し遅くなっている場合があります。スピードの調整は、DCモーターの場合にはモーター制御基板のトリマー抵抗(通常18コマと24コマの2個あります)を使って行います。一般的にはトリマー抵抗は、±15%ぐらいをカバーするように抵抗値を設定してあります。例えば18コマの場合は、18コマを中央値として、+3~-3コマくらいは調整できると思います。

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フジカSH9(上が24コマ、下が18コマ)

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エルモGS-1200(時計回しで早く、反時計回しで遅くなります)

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エルモST-180(右が18コマ、左が24コマ)

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エルモST-800(右が18コマ、左が24コマ)時計回しで早く、反時計回しで遅くなります。

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エルモSC-18(右が24コマ、左が18コマ)
(c)succhaさん(本サイトをご覧になって写真を送ってくださいました。)

(3)簡易テレシネへの応用

この抵抗を利用して、お持ちの映写機を簡単に簡易テレシネ対応にすることができます。簡易テレシネをするには20コマにしなければなりませんが、このためにはサイレント機を使うかサウンド機の場合はテレシネ用改造機が必要でした。サウンドフィルムのテレシネをするとき、これまではテレシネ専用機で映像をビデオ撮りし、別途に通常のサウンド機を用意して音声を取り込んでいました。これをトリマー抵抗を使って24コマ側を20コマに変更し、18コマ映写と20コマ映写ができるようにして、1台で映像収録と音声収録ができるようにしました。なお動画デジカメなら機種にもよりますが、単純にビデオ撮りするだけでフリッカー等がないテレシネができます。なおトリマー抵抗については、いまのところこのページに掲載した機種しか確認できておりません。その他機種についての情報をお寄せいただければ幸いです。頂戴した情報を生かして、この項をバージョンアップさせていまいりたいと思います。
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6.音声がでない

映写機の電源を入れ磁気再生モードにすると、ブーンというハム音が聞こえ、ボリウムをあげるとシャーというホワイトノイズがきこえれば、アンプは正常です。フィルムを映写しても音が出ない場合は、磁気ヘッドからスピーカーに至るまでのどこかに障害があります。音が出たり出なかったり、ボリュームや磁気・光学再生の切り替えスイッチなどを操作すると、「ガリガリ」「チリチリ」などの異音が出る時は、スイッチやコネクターの接触不良が原因と考えられます。ハム音もホワイトノイズも聞こえない場合は、電源トランスからアンプにAC電圧が印加されて(電流が流れて)いるか、テスターで測定できる人はチェックしてみてください。無理な使用でスピーカーコードのジャック部分の配線が切れている場合もあります。アンプ自体を修理するには、電気回路の知識が必要です。

(1)スピーカーと接続出来ているか?

スピーカーコードが正しく接続されているか、確認してください。

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フジカSH-9

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エルモST-180

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エルモST-800(ジャック部分が曲りで断線していました)

(2)音声磁気ヘッドが汚れていないか?

音声ヘッドは、テープレコーダーと同じ仕組みです。綿棒にクリーニング液(水でも代用可です。拭き取ればサビ発生の問題はありません。)を湿してヘッドを清掃します。

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フジカSH-9

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エルモGS-1200

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エルモST-180

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エルモST-800

(3)スイッチに問題がないか?

電気製品や音響製品は、長年使っていると各部にホコリが入り、ボリュームやスイッチを操作すると「ガリガリ」とか「チリチリ」というノイズ音がでます。これは当該部分の接触不良が原因です。分解して接点を掃除(接点復活剤とクリーング液を使用)したいところですが、一般的に分解は不可能ですので簡便法として、接点にクリーニング液を浸みこませてカチャカチャ動かしてみてください。大概はこれでうまくいくと思います。クリーニング液はレンズ用のクリーング液など絶縁性の液体(純水など)を使います。

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エルモST-180

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エルモST-800

(4)光学音声の再生

市販の光学録音フィルムの再生は、エキサイターランプのフィラメント像をフィルムの光学録音トラックに細い線になるように結像しフィルムが動くことによって走査されて、フィラメント像の長さ(波形の振幅に相当)が変化してフォトディテクター(シリコンブルーセル)の起電力(音響信号)となり、これをアンプで増幅しています。通常使用では、エキサイターランプはほとんど切れることはありません。ランプをはずしてフィラメントが切れていなければ、ランプは問題ないでしょう。エキサイターランプは、DC(直流)で点灯しています。ACで点灯すると電源の50Hz・60Hzのチラツキがハム音になってしまいますので。

接点に電圧がかかっているか、テスターでチェックしてください。フィラメントが切れている場合は、ランプを付け替えてください。エキサイターランプは販売しているところが少なく、新品を入手できない場合はオークションなどで中古品単品を、またはジャンク品の映写機を購入して部品取りをします。

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フジカSH-9

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エルモGS-1200

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エルモST-180


エルモST-800

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7.異音がする

異音がどこで発生しているか、観察して対処します。

(1)フィルムの給送・巻き上げの、いわゆるフィルム経路で異音が発生している場合

映写中にけたたましいフィルム走行音が出る場合は、フィルムのパーフォレーションが切れていたり、編集箇所のスプライサー部分(つなぎ目)が伸びていて、フィルム送り爪(クロー)が空振りしているケースがほとんどです。クローが空振りすると、供給側のフィルムのループが大きくなって、フィルムガイドを押し上げますので、ガイドを「チョンチョン」と押せば直ります。フィルムゲート付近で異音がでている場合、エルモの映写機(フジのSH-10、SH-30も同じ)は、映写中に操作ノブを「停止」の位置にして映写を止め、前部カバーを開けて、回転式のレンズホルダーを手前に回してフィルムゲートを開けることで、フィルムの状態を観察することができます。

(2)モーターの回転を開始すると、本体内で異音が発生している場合

裏カバーを開けて、通電して動かします。なお映写ランプは外しておいたほうが防眩になります。映写機の操作ノブ(映写・停止)を操作しながら、異音の発生箇所を探します。歯車の締め付けが緩んで歯車間の噛み合わせが不良になっていませんか。その他、異音の発生場所に応じて対応します。作業中は、とくに高速回転しているシャッターと、感電(100V電源)に注意してください。

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